“グローバル化”と“国際化”、
その違いは多様性と人材交流にあり レピュテーションの向上で実現する世界のKeio University
Date.2024.08.19
最先端の環境で教育と研究を行うためには、海外の優れた教育・研究機関や研究者との協力は欠かすことができません。慶應義塾は世界の中で何を目指し、どのように行動していくのか。「国際化」と「レピュテーションの向上」、2つのキーワードからそのビジョンを明らかにします。
グローバル化ではなく“国際化”を目指す慶應義塾
テクノロジーの発展とともにグローバル化が急速に進む現代。国境を越えたヒト・モノの交流が活発になる一方で、欧米発の価値基準や文化が非欧米諸国に広がる過程で画一化や軋轢が生まれるなど、国際社会はグローバル化がもたらす歪みに直面しています。
欧米化の脅威とローカルな社会の軋轢は、かつて福澤諭吉が危機意識を抱いた近代日本の情勢とも重なります。幕末期、海外渡航で西洋文明に接した福澤諭吉は、西洋列強による外圧がアジア諸国に迫る中、日本の国家としての独立を危ぶみ、旧弊の打破と西洋に学ぶ必要性を唱えました。西洋文化を無批判に受け入れる姿勢とは真逆の危機意識を持って、近代教育の道を拓いたのです。
現代においてもまた、慶應義塾が目指すのは欧米社会にならった均質な世界への適応ではありません。
「世界の一体化=グローバリズム」に対置する
「他国・地域を尊重する国際主義=インターナショナリズム」の考え方、
“国際化”こそが慶應義塾の目指すあり方です。
慶應義塾 常任理事 土屋 大洋
慶應義塾では現在、広い視野を持った国際人を育成する国際プログラムや、留学・交流プログラムの充実に取り組んでいます。「慶應から世界へ」「世界から慶應へ」。両面から教育環境を充実させ、国際社会を先導する塾員の輩出を図ることが目標です。
Programs
特色ある国際プログラムとして、全学部の学生が学際的な授業を外国語で受けられるGIC(Global Interdisciplinary Courses)をはじめ、英語のみで学位が取得できるPEARL(経済学部)やGIGA(SFC)など、すべて英語のみで学ぶことができるプログラムが実施されている。
国際交流の面では、慶應義塾大学と海外の協定校で2つの学位が取得できるダブルディグリープログラムのほか、様々な国・地域を対象に留学プログラムを実施。毎年400名近くの塾生が海外で学び、82の国や地域から約2,000名の留学生を受け入れている。
“国際”的な教育・研究機関として、慶應義塾が果たす役割
慶應義塾は教育・研究機関として、国際社会に貢献する活動も精力的に展開しています。
その一例として、安全保障や経済的困窮の解消など、世界共通の課題を解決するために加盟大学の学長・副学長が議論を行う「U7+アライアンス」では、日本加盟大学6校のうちの1校として参加。2023年の第5回年次総会は慶應義塾大学が主催し、『U7+アライアンス東京声明』の手交などに際して、ホスト校として大きな役割を果たしました。
また、AIなどの分野で学部、教員、学生の枠を超えた学際的協力を行うことが取り決められるなど、先端の研究分野においても、海外の政府や教育・研究機関と国際的な協力関係を築いています。
Partnership
2024年4月
カーネギーメロン大学とのAI分野における産学連携パートナーシップを締結
国際社会において一定の役割を担いつつあるKeio University。一方で、国際的な知名度の面では厳しい実態もあります。
海外で依然として低い慶應への評価
国際・IT分野などの主管を務める土屋大洋常任理事は、世界の大学の中で、慶應義塾大学の知名度が低いことに課題を感じています。
「“Keio”と書いてあっても“けいおう”とは読まれず、『カイオー?』と読まれる。それほど海外で慶應は知られていません」
国際機関が発表している世界ランキングのいずれにおいても、慶應義塾大学の順位は3桁台。世界の4,989機関(大学)が調査対象となった国際ランキング「QS世界大学ランキング2024」では188位。国内の国立大学と比べても高い順位とはいえません。
「大学の方向性や独自性が、ランキングの指標に必ずしもあわないことがあるので、気にする必要はないという声も塾内にはあります。それはそれで大事なスタンスですが、大学のレピュテーション(評判)が高まれば、世界中から優秀な学生・研究者が集まりやすくなるという教育・研究面でのメリットもあるのです」(土屋理事)
一方で、同ランキングの個別分野をみてみると、過去最大となる26分野において400位以内にランクイン。そのうち7つは世界150位以内に入り、2013年以降で最高の評価を受けました。
Ranking
QS世界大学ランキングでは、歴史や法学、人文学系統が高評価を獲得
大学自体は知られていなくても、個々の研究者は評価されているのです。
個性的で優れた研究を行っている特定分野のトップランナーを抱えている。
それは慶應義塾の強みですが、
もっとレピュテーションを高める取り組みも必要です。
慶應義塾 常任理事 土屋 大洋
近年では文部科学省による支援事業を土台に、海外から積極的に教員を招聘したことも、レピュテーション向上に貢献。海外からより多くの研究者を招くことで、研究が活発に行われる。研究が前進することで、国際ランキングが上昇する。さらに海外から研究者が集まる――。この好循環を生むためには、欧米以外の地域との連携が不可欠だと土屋理事は述べます。
「これまではアジアといえば中国が代表的存在でした。ところが近年は中国以外のアジアの大学に注目が集まり、日本の大学がアピールしやすい状況。30年後を考えれば、関係を結んでいくべき地域は中東、東ヨーロッパ、アフリカにあると考えています」(土屋理事)
アジアの大学との結びつきが弱い新興国との交流が国際化のカギ。近代化の歩みを目の当たりにしてきた慶應義塾だからこそできる貢献もあります。
「日本は植民地化を免れ、近代化に成功した稀有な国。そういう歴史と経験を共有することが、慶應義塾が今後の国際社会で独自のポジションを築くために求められる役割ではないでしょうか」(土屋理事)
レピュテーションを上げて、研究分野で世界と肩を並べる
Keio Universityに
レピュテーション(評判)を上げるためには、何よりもまず慶應義塾を知ってもらうための草の根の活動が欠かせません。
海外への情報発信の取り組み
Works
全世界から1,900万人以上の学習者が受講している教育プラットフォーム「FutureLearn」で展開している無料オンライン講座は、海外で人気を集めるコンテンツの一つ。特に貴重書や芸術作品などのアーカイブ、研究とともに日本文化を発信する内容が好評です。
慶應義塾大学の最新ニュースや研究内容を英語で伝える月刊メールマガジン「The Penmark」も、海外の研究者から反響を得ています。
発信の取り組みは、徐々に実を結びつつあります。慶應義塾大学が日本初のホスト大学として選出された、インドネシア政府による奨学金プログラム「IISMA (Indonesian International Student Mobility Awards)」では、数名の応募枠に対し、800人以上が応募。110校あるホスト候補の中で一番人気を誇りました。
慶應義塾で学びたい海外の学生が
年々増えてきているという手応えがあります。
国際化のビジョン実現のためもありますが、せっかく選んでくれるぶん、
受け入れるためのキャパシティも増やしていきたいです。
慶應義塾 常任理事 土屋 大洋
国際交流を支えるインフラ面の取り組みとして、2023年に新たに湘南藤沢キャンパスに隣接するΗ(イータ)ヴィレッジを開設。日吉、元住吉、綱島、高輪、湘南台に次ぐ6つ目の国際学生寮で、塾生と留学生が共に暮らし、学び合い、交流を深めています。
寮以外にも、コンテンツ発信、海外の教授や学生の受け入れに対応するための施設・人員の拡充など、国際化にはより大きな投資が必要になります。それでも慶應義塾が国際交流の輪を広げる意義はあると土屋理事は実感しています。
「台湾には台湾人塾員と日本人塾員が組織運営を行う台湾三田會があります。そこに出席すると、現地の会員の方々に『慶應義塾出身で本当によかった』と声をかけてもらえるんです。こういう声を聞くと、慶應が世界に提供できる価値はあると思えますね」
慶應義塾の教育と研究が、より大きな国際貢献に結びつくために。“世界のKeio University”への歩みは、皆様の支援に支えられています。
“世界のKeio University”への歩みに
興味を持ってくださった方へ
慶應義塾では、
国際化の実現、レピュテーションの向上に向けた活動のため、
慶應義塾教育充実資金への寄付を募集しています。
ご興味を持たれた方は、基金室までお気軽にご相談・お問い合わせください。
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