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慶應義塾長 伊藤公平

Interview with the President

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塾長インタビュー vol.1 Date.

慶應義塾が
守り受け継ぐ“人間力”

「慶應義塾に関わるすべての方々とより良い社会を目指していくことこそ、私が目指す慶應義塾の姿です」

近年急速な変化を遂げる私たちの社会。
​その中で慶應義塾は何を目的にどのような挑戦をしていくのか。
​伊藤公平塾長がそのビジョンを語ります。

福澤諭吉先生の言葉に、「気品の泉源、智徳の模範たらんことを期し、之を実際にしては居家、処世、立国の本旨を明にして、之を口に言ふのみにあらず、躬行実践、以て全社会の先導者たらんことを欲するものなり」という言葉がありますが、今の時代に必要となる素養はどのようにお考えでしょうか。

伊藤

福澤先生は「慶應義塾の目的」において、門下生たちにその志を託しました。これは慶應義塾の真に目的とするところを最も簡明に表現した一文と言えます。福澤先生の述べた、全社会の先導者となるためには、世界の舞台に立ち、自分や日本が置かれた現状を理解し、自分のため、家族や仲間のため、地域のため、国のため、世界のために為すべきことを明確にして実行する必要があります。必要なのは、「人間への目線」です。そしてこれは慶應義塾が受け継いできた理念に通じるものです。

慶應義塾の創立者である福澤先生は、明治時代初期に欧米を視察した際、蒸気機関をはじめとする科学技術、特に、それを生み出す社会のあり方、システム、文明の利器を使いこなす「知と徳」、すなわち人間の力こそが、世の中を豊かにすると考えていたといいます。

人間への興味と関心を軸に、最先端の環境の中に身を置きながら、それぞれの課題を見つけて見識を深めていく。まずは正論を堂々と述べることが大切です。しかし、正論だけでは動かせないのが世の中なので、すべての方々と対話や交流を重ね、現実的な打ち手を模索することで、解決に導いていく。これが慶應義塾の目指す学びであり、人間力です。観察力を育み、人との対話を重ねながら、人間力を磨くことがより良い社会を創っていくと考えています。

福澤先生の思考構造に迫る

「人間への目線」を養うために、慶應義塾ではどのような取り組みが行われていますか?

伊藤

AIの進化が顕著になっています。例えば、ChatGPTの登場を一つのブレークスルーとして、私たちの身の回りには日々新しい生成AIのサービスやソリューションが生まれ、実装されています。今後AIはますます高度な文章を書くようになり、さらに高度な判断を下すようになることは間違いないでしょう。自らの尊厳を重んじ、自らの考えで行動しているつもりでも、インターネットを通した情報を得て、意見を交換している範囲では、すべてがAI解析され、各個人にとって心地よい情報だけが提供され、付き合いやすい領域とだけつながるように物事が進んでしまいます。これからの時代、それぞれがしっかりと考え判断する、まさに「独立自尊」のための努力が求められるのです。

「独立自尊」の精神を実践するためには「人間への目線」を養うことが求められます。そこで、慶應義塾では、人との対話を重視した様々な取り組みを始めています。

2022年から始動している「塾生会議」では、学生が、大学内のルールや社会の仕組みなどの障壁と向き合い、様々な人々と対話を重ねて学びながら、様々なチャレンジに取り組んでいます。昨年は、OpenAIのSam Altman CEOや尹錫悦大韓民国大統領、赤根智子国際刑事裁判所(ICC)所長、アンワル・イブラヒム マレーシア首相など、グローバルなオピニオンリーダーを招き、現代社会の諸問題に対して塾生や教職員と対話する機会をつくりました。今後はさらに、塾員の皆さん、地域や企業との連携など、慶應義塾を取り巻くすべての方々との接点を増やし、関係性を強固にし、一緒により良い社会を実現していきたいと考えています。

福澤先生 自筆
慶應義塾の目的

伊藤塾長の目指す理想の慶應義塾の姿とはどのようなものなのでしょうか。

伊藤

塾生、教職員、塾員、保護者、慶應義塾に関わるすべての人々が先導者として、次の世代と、さらに続く世代が豊かで平和な暮らしを送るため、自由闊達な議論と対話に基づき、性別や国籍、文化の違いを超えて信頼関係を構築していく。そして時代とともに変遷するコモンセンス(常識、良識)に基づき、新しいアイデアや、やるべきことに対して愚直に挑戦しつづける。それが私の目指す慶應義塾のあり方です。

先導者というと、難しい革新的なことに取り組む必要があると思われがちですが、実は、当たり前のことに取り組み、やり遂げるだけで十分なこともたくさんあります。そのときに一番大切なのが、上司や先輩も含めて、ぶれない志を持って、仲間たちと信頼関係を築いていくことであり、コモンセンスに基づく行動とそれを導く人間性です。これこそが義塾の精神だといえます。

歴史を振り返って「あのとき慶應義塾があってよかった」と思える存在であり続けるために、今後も慶應義塾はチャレンジを続けていきます。そしてその挑戦は、福澤先生が目指した日本の真の意味での近代化を実現し、後の世代へより良い社会を残していくことに貢献するものであると確信しています。

より良い未来・社会の実現を目指す、
慶應義塾のチャレンジに
興味を持ってくださった方へ

慶應義塾では、今回ご紹介したビジョン実現に向けた活動をはじめ、
様々なチャレンジ
に向けた寄付を募集しています。
ご興味を持たれた方は、基金室サイトをご覧ください。

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