地方出身の塾生を支援する奨学金を続けてほしい
塾員みんなで支えていく維持会の理念に賛同します
――株式会社サロンドール代表取締役/一般社団法人日本ソイフードマイスター協会 理事/NPO法人子供地球基金 理事
池上 真麻君
塾員で慶應義塾維持会員でもあるお父様の影響を受け、自らも維持会を支援したいと思うようになった池上 真麻君。維持会員になって初めて知った維持会奨学金活動の魅力や、維持会を支援することの意義、そして慶早戦に熱狂した塾生時代の思い出などを伺いました。
修学困難な塾生の環境を整える
――昨年6月から維持会をご支援いただき、ありがとうございます。ご寄付をされるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
父も慶應出身で長い間、維持会員として寄付を続けています。自宅に維持会員に毎月届く三田評論があたりまえのようにあるのが、小さい頃からのわが家の風景でした。弟も妹も私を含めて三人とも慶應義塾幼稚舎から一貫教育校を経て大学へ進学しました。社会人になり、それぞれの同窓会には寄付していましたが、大学にはなぜか寄付をしていなかったんですね。そんなとき連合三田会の幹事年になり、同級生に頼まれて姉妹で経営する株式会社サロンドールで連合三田会に協賛することになりました。寄付をして慶應義塾に貢献できたことが自分でも嬉しく感じ、「そういえば塾員である父も長く維持会員だな」と思い、昨年から個人でできる寄付をしようと維持会を支援することにしたのです。
――維持会の活動のどのようなところが魅力ですか?
維持会奨学金として、地方出身の修学困難な塾生が勉学に専念できる環境を整える活動は素晴らしいと思います。私は親戚が運営する児童養護施設を小さい頃から見てきました。いろいろな理由があって施設で生活する子供たちは、将来大学で勉学に励みたいという希望があっても、自己資金だけでは大学進学が現実的には厳しいのです。優秀な学生が慶應で学びたいと思ったとき、経済的な理由で断念せざるを得ないのはもったいないと思います。
しかし、経済的に少し余裕のある塾員がそれを支えることができるのであれば、とても良い制度ではないでしょうか。福澤諭吉先生が慶應義塾を創立された想いもそうだったのではないかと推察します。いろいろな可能性のある人たちに勉学の機会を与えたい、多くの学ぶ人たちを社中が協力して支援するようにしたいと望まれ、こうして維持会となって支援の輪が広がっていると思うのです。
――1万円から始められる維持会の制度をどう思いますか?
大学を卒業してすぐの新社会人にとっては1万円の寄付は大変かもしれません。しかし、年齢を重ねてくると、1万円の使い途をどうするかの判断ができるようになってくるのではないでしょうか。たとえば卒業10年とか20年の節目に、「維持会という制度がある」ことを知らせてもらえれば、「1万円から支援できるのなら会員になろう」と思う人もいるはずです。私の場合、最初は「維持会」という名称なので経済的理由により修学困難な塾生の奨学金活動をしていることが分からなかったんですね。それを塾員みんなで支え合うのが維持会であると、もっと発信していけば多くの方の賛同が得られるのではないかと思います。
心の豊かさを生む支援
――維持会奨学金を受給する塾生への想いを聞かせてください。
幼稚舎から女子高までの同級生のほとんどは都内か近郊の実家から通う人たちばかりでした。それが大学に入ってからは、地方から入学した友だちが一気に増え、彼らは学校が始まる前の早朝や、ゼミ活動の合間にアルバイトをたくさんしていたのを覚えています。あらためて考えると、学費の他に家賃や生活費も自分で払わないといけないし、親御さんの負担も全然違うのかなと思いますね。
だから、このような制度を活用できるのであれば、なんでも活用してほしいです。それから、奨学金を受給しているから何かを我慢しなければと思ってほしくないですね。興味のあるイベントには参加すればいいし、好きな洋服は買えばいい。心が豊かでなければ、充実した学生生活を送るのは難しいと思います。学生生活の不安を少なくすることで勉学にも集中できるようになるはずなので、奨学金を自分の心を豊かにするために使ってもらえればいいのではないでしょうか。
――これからの維持会に望むことはありますか?
維持会は素晴らしい制度なので、この先もずっと続けてほしいですね。私の場合は、父が維持会員であったにもかかわらず、維持会に奨学金制度があることを知りませんでした。「維持会」といえば「地方出身の塾生を支える奨学金」であることがすぐに分かれば、もっと支援したいと思う塾員の方が増えると思います。
実は今年の春に私の実家の離れをウクライナの避難民に提供したのですが、塾員のみなさんからも素晴らしい支援がありました。もともとは妹の幼稚舎からの同級生の呼びかけに応じる形で妹が支援を引き受け、実家の離れを提供したのですが、戦況が悪化して日本に避難したいというウクライナの家族のサポートをすることが決まり、受け入れには気が遠くなるほどの複雑な申請書類の準備と資金が必要でした。緊急を要する中、SNS上での妹たちの連携は素晴らしかったです。また、塾員やその他多くの方が「ちゃんとした形で使われるのであれば寄付をしたい」と言ってくれ、実際に協力してくれました。
思い出だらけの慶早戦
――池上さんが慶應義塾で印象に残る思い出は何ですか?
幼稚舎から16年通ったので私の人生の大部分を占めていることは間違いありません。一生の仲間がたくさんできたのは、私の宝物です。そういう仲間に出会えたことが慶應で学んでほんとうに良かったと思えることです。同級生の他にも社会人になってから出会った塾員の先輩方もたくさんいらっしゃいます。どなたも慶應の後輩に温かく、面倒見がいい方ばかり。起業してからは経営のアドバイスをしていただいたり、事業で連携させていただいたり、助けていただくことが数えきれないほどあります。初めてお会いした方でも慶應卒というだけで一気に距離が近くなる経験は何度もしました。
――距離が縮まると言えば、慶早戦の応援もスタンドが一体になりますね。
そうですね。慶早戦は幼稚舎のときから学校行事で何度も行きましたし、慶應義塾女子高等学校ではバトン部に所属し、神宮球場で大学生のチアリーダーの方と一緒にスタンドで踊っていました。勝って泣き、負けては泣き、慶早戦はもう思い出だらけですね。
大学を卒業して何年も経った後、慶應義塾高等学校野球部が夏の甲子園大会に出場したときには、友だちと一緒に甲子園まで観戦に行きました。もちろん慶應側の観客席は満席だったのですが、球児の親世代よりもはるかに上の年代の方たちばかり(笑)。「塾歌」や「若き血」が何度も流れて、みんなで声を揃えて歌っていたら、感動して泣いてしまいました。慶早戦も甲子園も、塾員の「慶應愛」がすごいですね。
人格や考えが形成された場所
――池上さんにとって慶應義塾とは、どのような存在ですか?
自分の人格や考えが形成された場所ですね。福澤先生があの時代から男女平等を唱えていらしたのは、ほんとうにものすごいことです。今や日本も遅ればせながら女性があたりまえのように働くようになって、この時代を福澤先生が見たら、どう思われるでしょうね。そのくらい私にとって慶應義塾は大きな存在ですね。幼稚舎の頃から男女平等の文化のなかで育ち、自分の意見をはっきり言い、相手の意見もちゃんと聞く姿勢が身につきました。これも福澤先生の教え、慶應の環境のおかげだと感謝しています。
――慶應義塾がもっと良くなるために、あったらいいものは何ですか?
私の同級生で出産した後に、またキャリアを復活させた人がたくさんいます。彼女たちが一様に言うのは、中学や高校のお弁当を作るのが大変だということです。女性が専業主婦だった時代はともかく、みんなが働くようになった今、給食のシステムがあれば働く女性の負担が減ると思います。女性の社会進出を後押ししてきた慶應義塾だからこそ、そういう部分にも取り組んでもらえたらいいですね。
みんなで支え合うという理念
――慶應義塾に期待することはありますか?
これまで慶應義塾は日本をリードする人材をたくさん輩出してきたと思います。これからは、日本はもちろんですが、グローバルに活躍できる世界のリーダーとなる人材を育成していってほしいですね。私は現在、姉妹で二つの法人を経営していますが、私が代表を務める株式会社サロンドールは「女性のライフスタイルを彩り豊かにすること」をテーマに商品開発をしており、今は出産前後のプレゼントとしての「ダイパーケーキ(おむつケーキ)」が人気です。また、妹が代表を務める一般社団法人日本ソイフードマイスター協会という大豆の素晴らしさを発信する団体では、日本では伝統的に食べられている大豆について、和食にとらわれない様々な料理方法の提案をしていますが、こちらは世界に発信していきたいと考えています。どちらの活動でも困ったことがあれば、塾員のみなさんにアドバイスをもらいながら運営してます。
――最後に塾員のみなさまにメッセージをお願いします。
慶應義塾には「維持会」という素晴らしい制度があります。私も昨年から、「塾員みんなで慶應義塾と勉学に励む塾生を支え合う」という理念に賛同し、維持会員になりました。
1万円から始められるので、詳しくは維持会の活動内容をこちらで確かめたうえで、ぜひ維持会に参加していただきたいと思います。
塾員が「慶應がこうなればいいのに」という声を上げれば、きっと届くはずです。まずは思うことがあれば、しっかり声を上げること。それがこれからの慶應義塾をよくしていくことにつながる第一歩。みんなで慶應義塾を、維持会を盛り上げていってほしいと思います。
※掲載内容は2022年7月11日現在のものです。