特集記事

自らの背骨に突き刺さるような
信念を見つけてほしい
――株式会社クリーマ 代表取締役社長 クリエイティブディレクター 
丸林 耕太郎 君

CONTENTS

  1. 1)学生時代に取り組んだこと
  2. 2)卒業後の進路
  3. 3)経営者になるための行動
  4. 4)起業するきっかけ
  5. 5)経営する想い
  6. 6)塾員同士のつながり
  7. 7)慶應義塾に望むこと
  8. 8)慶應義塾への支援の形
  9. 9)今後チャレンジしたいこと
  10. 10)塾生へのメッセージ

慶應義塾大学在学時から経営者になるという目標を見据え、世の中の課題を解決するために「クリーマ」を創業した丸林 耕太郎君。「愛ある事業で人と世の中を元気にしたい」と語る丸林君が三田キャンパスで10の質問に答えてくれました。

 

(Q.1)学生時代に興味をもって取り組んだことは?


慶應義塾湘南藤沢中等部に1期生として入学し、中学時代はテニスに打ち込みました。神奈川県大会で3冠、関東大会で2冠を獲得したのですが、慶應義塾湘南藤沢高等部に進んだあと、人生を賭けてできるものは何だろうと考え、テニスをやめて音楽活動に没頭しました。音楽に可能性を感じ、プロとして勝負したいと思ったのです。

幼少期

DJ活動期(高校在学中)
高校時代は早く何者かになりたい気持ちが強く、自分なりに一所懸命に生きることが空回りをすることもありました。誇れたものではありませんが、停学になったことも複数回。そのとき、強く心に響いた言葉があります。校長先生が面談の際に母親に「丸林君は大丈夫。なぜなら、いい目をしているから」と言ってくれたのです。一生徒をしっかり見てくれているのだと、とても嬉しく感動しました。

 

(Q.2)卒業後の進路はどう考えましたか?


中学から高校、大学と慶應で学び、いい先生方や仲間に恵まれたのは私の土台になっています。大学3年のとき、慶應の仲間たちと2000人規模のイベントを企画していたところ、私にひとつの転機が訪れました。
スポンサードをお受け頂いたある大きな企業の創業社長の言葉に、心を射抜かれました。「卒業後はどうするの?」と聞かれ、私は「今プロとして音楽活動していて、卒業後もその道に進むつもりなので就職は考えていません」と答えました。「音楽で最大多数のハッピーをつくりたい」と言う私に、塾員の大先輩は「それが本心なら、君は経営者か政治家が向いていると思うよ」と言われたのです。
そのときは、その言葉の真意が全くわからなかったのですが、そのあと1カ月考えて合点がいき、「確かにそうだ。経営者になろう」と決めました。人生最大の転換点でした。

 

(Q.3)経営者になるために行動したことは?


人生のビジョンと自分がやるべきことが重なり、今でも本当に感謝しています。これまで音楽活動などで培った感性や経験から、革新的な事業を生み出せる自信だけはあったのですが、それを今やっても成功はさせられないと思いました。だから、まずは今の自分に足りない、ビジネスを推進するための力を養うために、音楽活動をやめ、3年間という期限付きで修行することを前提に大手インターネット広告代理店に就職しました。
ビジネスの基礎はすべて、この会社で学んだと言っても過言ではありません。入社後9カ月間は全く結果が出なかったのですが、自分の勝ちパターンを見つけてからは日に日に受注が拡大していき、入社2年後には事業部長にまでなりました。
そこで一番得たものは、壁を乗り越えるマインドでしょうか。結果が出なくても目的を見失わず、急いでも焦らず、やると決めたことを徹底的にやりきり続けることで営業成績を残し、事業部長としても一定の成功体験を重ねることができた中で「今の自分なら、やれる」という自信を得ることができた会社員時代。あの経験があったからこそ、クリーマを創業して順風満帆ではなかった時期にも、ぶれることなく戦い続けることができたのだと思います。

 

(Q.4)クリーマの起業につながったきっかけは?


私にとって起業のいちばんの目的は、「ハッピーの最大化」です。世の中にポジティブなインパクトを与えること。その考えは今も当時も変わっていません。そういう思いで、いよいよ経営者になるため会社を退職し、起業の準備に入りました。まっさらな状態でノートに事業アイデアを書き出していきました。約50のアイデアの中から私の原体験をもとに生まれたのが「Creema(クリーマ)」というサービスです。プロとして音楽活動をしていたなかで、いくら才能があっても、努力をしても評価されない音楽家がいることに気づきました。音楽だけでなく、才能ある画家やデザイナーなどクリエイターの友人が創作活動だけでは食べていけない状況があったのです。
クリエイターが正当に評価される状態を仕組化したい。そんな想いから「作品の個人間売買」というビジネスモデルが生まれました。このサービスを巨大な経済圏に拡げることができれば、多くの人をハッピーにできる。この領域でNo.1を目指そう。クリーマを形にするための挑戦が始まったのです。

 

(Q.5)どのような想いで経営していますか?


サービスにかかわる皆がハッピーになることが、事業にとって最も大切だと僕は思っています。クリーマのコーポレート・ステートメントは「まるくて大きな時代をつくろう」です。私たちがいろんな領域でサービスを提供することで、元気に幸せに生きる人が増えていくという世界観を表現したものです。
私は世の中の様々な課題を「愛ある事業」で解決していくことで、新しい流れをつくり出したいと思っています。学生時代から持ち続けてきたテーマである「ハッピーの最大化」のために、意志をもって人びとや世の中を大切にしながらチャレンジしていきます。

 

(Q.6)起業するときの塾員同士のつながりは?


たくさんの塾員のみなさんとのご縁がありました。本当に多くの方に助けていただきました。まず、クリーマを一緒につくったのはSFC時代からの同級生です。彼は現在も役員として共に経営を担っていて、創業当初から苦楽を共にしてきてくれました。そして、もう一人、印象的な人物がいます。会社の急成長期に大型の資金調達に動いた際、投資会社との協議は順調に進んだものの、銀行融資は一切すすまず、断られ続ける状況でした。そんな中で、最初に融資の意思決定をしてくれたメガバンクの担当者も慶應の同級生でした。ここだけの話ですが、彼は銀行の支店長から「丸林社長が仲間だから融資するのか? クリーマという会社に見込みがあるから融資するのか?」と迫られ、「丸林君は親友ですが、クリーマは必ず成長する企業と確信しています」と支店長を押し切ってくれたそうです。
数え上げたらきりがないほど、たくさんの塾員の方のおかげで現在のクリーマがあります。せめてもの恩返しに、ゼミの講義などの依頼にはできる限り応えるようにしています。これまでに総合政策学部と環境情報学部の学生が何百人も集まるセミナーや、慶應義塾湘南藤沢高等部の授業でお話させていただく機会もありました。

 

(Q.7)慶應義塾に望むことは何ですか?


一人ひとりが成長するための素晴らしい環境があるのが慶應だと思っています。慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部・慶應義塾大学でいろいろな活動をやりながら、自分とは何者なのかと考える日々を過ごしました。ルールで縛るのではなく、自分で考え、自ら行動することを育む文化があるのが慶應。この環境で学ぶことで、自分自身についてしっかりと考え、自らの役割を知り、人生の幹となる”自分の軸”を持つことができました。「自由」と「規律」のバランスが取れているのが本当に素晴らしい。
この環境で出会った仲間との関係は特別です。卒業後も慶應出身というだけで、すぐに親しくなれます。お互いに慶應に対する愛があるから。これからも、そういう学校であってほしい。慶應に入学し、卒業したことに誇りを持ち続けられる学校であり続けてほしいですね。それがあれば、人と人は自然につながっていくと思っています。

 

(Q.8)慶應義塾への支援の形で考えられるものは?


学生の間は、人生のうちで唯一と言っていいくらい、自分と向き合える時間を持てるときです。そんな感性豊かなときにこそ、よりリアルな、いろいろな世界の大人に触れ、対話できる機会が多くあるといいと思います。経営者や政治家、アスリート、アーティスト… もちろん他の業界も含め、様々な世界にかっこいい大人がいます。とにかく、無意識に世の中のレールに乗ってしまう前に、自らのアイデンティティを確立して欲しい。人生が大きく変わるから。そんな考え方をヒントに、微力ながら自分なりの貢献ができたらと考えています。
人と人とのリスペクトが在学時代にある。それが循環して、将来も脈々と続いていくのが慶應の素晴らしいところ。それが、私が考える慶應への支援の形です。

 

(Q.9)これからチャレンジしたいことは?


私の人生の前提にあるのは利益の最大化ではなく、ハッピーの最大化を実現することです。現在の主力事業のCreemaはもちろんですが、ほかにも世の中のいろいろな課題をハッピーに変えていく事業を実現していきたいですね。愛のある事業を数多く手がけ、今までなかった、誰も見たことがない企業グループをつくるのが目標にあります。それをできるだけ早く形にするのが私のチャレンジ。自分の人生を賭けてやる究極のチャレンジです。
それからもうひとつ。「世の中をハッピーにしていく」ことが、“きれいごと”に留まらないようにしたい。そういう企業が、経済的にも社会的にもしっかりインパクトを生み出し、永く成長していく姿を示すことで、これからの新しい時代のスタンダードをつくっていきたいですね。

 

(Q.10)塾生へのメッセージを!


学生のときは自分がやりたいことを自問自答し、やるべきことを真剣に考えることができる、贅沢で重要な時間を誰もが持っています。目先の利益や年収、出世などの体裁にとらわれず、自分の価値観を見つけることに時間を費やしてほしい。何にでもチャレンジし、いろいろな体験をして、自らの背骨に突き刺さるような信念を見つけてほしい。学生のうちに、人生レベルで自分を貫く信念を見つけられたら、きっと幸せな人生になるはずです。

※掲載内容は2023年6月22日現在のものです。

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