一人ひとりが慶應を盛り上げていくことが大切だと思います。
――日本産科婦人科学会 専門医 鳴海 加奈子君
「やはり、慶應は私立のトップだと思うので、ずっとこの場所に存続していってほしい」と語る鳴海 加奈子君。2020年の新型コロナウイルス感染症拡大第一波の際に慶應義塾が緊急支援として募った慶應義塾大学修学支援奨学金に寄付していただいた想いを、1年の時を経て2021年8月に三田キャンパス旧図書館内で聞きました。
グループメールで知った修学支援奨学金募金
慶應義塾基金室(以下K):昨年はコロナ禍で慶應義塾大学修学支援奨学金(以下、修学支援奨学金)へご寄付をいただき、ありがとうございました。
鳴海加奈子さん(以下N):いえいえ、少しでも学生さんの役に立てばとの思いからです。
K:今回ご寄付をいただいたきっかけは何だったのですか?
N:私は幼稚舎から中等部、女子高等学校(以下、女子高)と慶應義塾で学びました。現在は他大を含め?医学部と歯学部に進学した卒業生のグループLINEがあって、私もそのグループに所属しているんです。ここに、昨年の新型コロナウイルス感染症が拡大した際に緊急支援を募るメッセージが入ってきました。その発信元が慶應連合三田会会長の菅沼 安嬉子先生名義だったので「これは見過ごすわけにはいかない」と思い、寄付をさせていただきました。
K:菅沼連合三田会会長からの呼びかけが大きかったのですか?
N:そうですね。菅沼先生には女子高校在学中、保健の教科を教えていただいたり、私が進路で悩んでいるときに相談に乗っていただいたり、大変お世話になりました。菅沼先生のアドバイスがあったからこそ、別の大学ですが医学部に合格しましたし、その後に医療関連の道へ進む際にも個人的に相談したこともあり、本当に感謝しています。尊敬する菅沼先生の名前で学生への支援の呼びかけがあったものですから、せめてもの恩返しをしたいと思いました。
クラスの仲が良かった慶應女子高時代
K:幼稚舎から女子高まで慶應義塾で学んで印象深い思い出はありますか?
N:幼稚舎では林間学校に行ったり、中等部では器楽部に入って音楽会や展覧会で演奏したりしたのは、今でも良い思い出として残っています。女子高では、クラブ活動(アイリッシュハープアンサンブル部に入っていました。)が盛んだったことに加えて、演劇会の大道具をクラスみんなで作ったことや、先生のお誕生会を授業時間にやったこともありました。クラスみんなの仲が良く、一緒に何かをやることがすごく楽しかったですね。小学校の高学年のときに立派な体育館ができたんですけど、良い環境で育ったんだなとつくづく思います。
K:今でも同級生のみなさんと連絡は取り合っているのですか?
N:幼稚舎の同窓クラスのメーリングリストがあって、ときどき集まりのお知らせが回ってきますね。子供がいるのであまり参加できていないのですが。中学、高校のクラスでは公式ではなく、お友だち同士のネットワークで連絡を取り合っています。離れていたり、それぞれの社会や家庭での役割があるのでなかなか会えないです。
自立した学生たちを応援する気持ち
K:今回ご寄付をいただきましたが、後輩への思いを聞かせてください。
N:私は女子高を卒業後、別の大学に進んだので三田キャンパスには殆ど入った事がなくて。しかし学生のみなさんは、せっかく頑張って慶應大学に入学されたにもかかわらず、コロナ禍にあってキャンパスにも満足に通えない状態が気の毒で仕方がありません。そんな中でも気を落とさず、勉学に励んでもらいたいと思い、支援させていただきました。
K:学生たちを応援したい気持ちからだったのですね。
N:ええ、そうですね。とくに地方から入学された学生さんはアルバイトをしながら通学されている方もいると聞きます。大学生になると、自分で決めて行動するようになりますよね。それなのに行動する場がなくなるというのは、とても悔しいこと。若いうちはルールの範囲内で伸び伸びと行動し、安心して勉強ができるようになってほしいです。そして自分の好きなことを見つけて、それに向かって努力し、自分の個性や実力を伸ばしていってもらいたい。それが一人ひとりの将来につながっていけばいいと思います。
福澤先生の教えから人間性を学ぶ
K:まさに福澤先生の教えにある独立自尊の考えですね。
N:はい。みんなが得意なことを一生懸命にやって、成長してほしいですね。福澤先生の数々の教えは、子供たちにとって本当に大切なことだと思います。若いころから学問を究められ、その知識を広げ、日本の行く末を真剣に考えていらっしゃったんだなと。すごく努力家で、新しいものを取り入れることも上手。協力者がまわりに多かった人徳のある人間性など、私たちも学ぶべきことが多くあると思います。
K:これからの慶應義塾に期待することはありますか?
N:私たちの頃も福翁自伝などを読みなさいといただいたりしたんですけど、学生たちに、もう少し授業で福澤先生の教えや功績を伝える機会があればいいと思います。成長途上の学生たちがそこから学んで、自分はこうしたいと自立した考えを持つようになり、画一的な価値観にとらわれるのではなく自分らしさを表現することで、社会全体にもこうした考え方が広がることを期待します。
ずっと存続する学び舎であってほしい
K:鳴海さんにとって慶應義塾とはどんな存在ですか?
N:やっぱり、ここは子供の頃から通ったところなので、いくつになっても私にとっての家みたいな場所ですね。私は親が幼稚舎に入れてくれたようなものですけど、大学生のみなさんは自分の意志で慶應を目指して入学されますよね。学生さんにとっては、ほんとうに自分のホームという気持ちが強いと思います。私自身、良い先生に巡り合って感謝していますが、これからも子供たちの個性を大切にした教育にいっそう力を入れてほしいですね。
K:慶應義塾の卒業生として、ひとことお願いします。
N:コロナ禍で学生たちが困っているとき、卒業生が寄付をするのはあたりまえのこと。一人ひとりが慶應を盛り上げていくことが大切だと思います。卒業してもその気持ちを忘れずに、この「ホーム」をみんなで守り続けていきたいです。
※掲載内容は2021年9月14日現在のものです。