明治12年1月25日に開かれた「慶應義塾新年発会」の記事のなかで、福澤先生は次のように述べています。
「慶應義塾の今日に至りし由縁は、時運の然らしむるものとは雖ども、之を要するに社中の協力と云はざるを得ず。其協力とは何ぞや。相助(あいたすく)ることなり。創立以来の沿革を見るに、社中恰(あたか)も骨肉の兄弟の如くにして、互に義塾の名を保護し、或は労力を以て助るあり、或は金を以て助るあり、或は時間を以て助け、或は注意を以て助け、命令する者なくして全体の挙動を一にし、奨励する者なくして衆員の喜憂を共にし、一種特別の気風あればこそ今日までを維持したることなれ」(『福澤文集二編』)
ここでいう社中とは、慶應義塾を構成している教職員、学生、卒業生、在学生保護者など、義塾関係者すべてを包含した結社と考えられています。
福澤先生が述べているように、慶應義塾が日本を代表する学問・教育の府となり得たのは、義塾を構成する人々がそれぞれの立場で義塾を支える「社中協力」の精神があればこそでした。
「金を以て助るあり」とされている、慶應義塾のこれまでの主な募金活動をご紹介します。
1880
明治13年
明治11、2年頃、義塾は財政的な行き詰まりから存廃の岐路に立たされました。この窮状を打開するため、同13年に「慶應義塾維持法案」を制定、年間の経常収支において1万円あれば事足りた時代に4万4,365円の維持資金の申し込みを得て、義塾存廃の危機を自らの力で見事に克服しました。それは私学が卒業生及び世の篤志家に訴えて改善充実の寄付を求めた最初の試みでした。
1889
明治22年
「慶應義塾大学設立記念章」とある。大学部文学科・理財科・法律家を設置、私立大学最初の総合大学、修業年限三ヶ年。同年1月27日第一回始業式挙行。入学者59名。
1897
明治30年
幼稚舎から大学部までの一貫した教育制度を整備し、義塾の財政基盤をより強固なものにするために、全国に広く寄付金を募り義塾の基金として蓄えました。
1901
明治34年
1908
明治41年
明治45(1912)年5月18日慶應義塾創立五十年記念図書館開館式挙行。同年4月竣工の図書館は同月16日から開館、学生の閲覧に供し、11月1日からは一般にも、入館料5銭で公開した。
1916
大正5年
福澤以来の医学への関心を背景に、医学部は大正6(1917)年、世界的な細菌学者である北里柴三郎を学部長に迎え慶應義塾医学科として発足しました。第一次世界大戦の影響で資金確保に苦労しましたが、最終的には建設費300万円の寄付を受けることができました。
1923
大正12年
関東大震災による被害の復興資金を調達するために30万円が募集されました(一口50円)。
1933
昭和8
昭和8(1933)年3月15日着工、昭和9(1934)年4月竣工。鉄筋コンクリート造り3階建、延3048坪余、4月22日新入生入学式、5月1日授業開始。関東大震災後、義塾はさらなる発展充実のため、神奈川県日吉台に13坪あまりの用地を得て、大学予科を移転することになった。その用地の約半分は東京横浜電鉄の寄付によるものであった。
1946
昭和21
戦災による打撃の最も多かった医学部では、まず大学病院が建った。昭和23(1948)年1月着工、9月30日竣工。戦後における民間三大建築の一つと言われて世間の目を見張らせた。木造2階建スレート厚板かわら葺、延24坪余、155床とした。11月5日開院式兼落成祝賀式挙行。昭和34(1949)年3月一部改造、179床となる。その後、本格的な復興計画にもとづき、昭和38(1963)年に取り壊された。
1958
昭和33
慶應義塾創立百年記念に事業の一として、日吉記念館が昭和33(1958)年10月20日に落成。日吉高地のほぼ中央に位する。正面の銀杏並木の坂道をのぼりつめた突き当たりで、体育館兼用の会堂として設計されている。鉄骨鉄筋コンクリート造り、地下1階地上3階建。
1983
昭和58
1990
平成2年
湘南藤沢キャンパス開設時の緑化計画実現のために、三田会による募金活動が行われました。
2008
平成20年
150年の伝統と歴史を礎にオープンでグローバルな学塾を目指し、世界水準で教育・研究・医療等の質の向上を目指しました。
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このように、19世紀・20世紀と決して平坦な道程ばかりではありませんでしたが、福澤先生の精神を受け継いだ義塾社中の熱意と尽力によって、慶應義塾は困難を乗り越え発展してきたのです。
そして、21世紀。国際社会は大きな変化を遂げ、政治・経済・社会のあらゆる局面に置いて複雑化、不透明化が進んでいます。
この様な時こそ、慶應義塾は日本と世界の未来に思いを馳せ、社中協力のエネルギーをもって、新しい時代を担う健やかな若者を育み、教育・研究・医療を通じて21世紀社会に貢献する先導者として使命を果たしていきます。